* * *
ついた先は、音楽室。
ピアノの練習室は個室だし、防音にもなってるから盗み聞きされる心配もない。
田島は怒られたみたいにシュンとしてるけど…俺の怒りの矛先は、田島に向けてじゃない。
「なぁ、お前それでいいのかよ?」
「いいんだって」
「いいって顔してねーよ!」
「…だって、……」
俺が変なアドバイスしたからだ。
まさか、こんなことになるなんて…。
「ごめん、俺が無責任なこと言ったから…」
「泉は悪くねーって」
「でも、俺は……」
「うーん、部内の空気おかしくなったらゴメンなー」
俺の言葉を遮り、変なことを心配してる。
そんなのはどうでもいいんだ。
俺はただ、田島の気持ちが消えてしまいそうなのが嫌なだけで。
「あのさ、これ花井にも言ったんだけど」
「…なに?」
「水谷と栄口には言わないで。あと、三橋も」
「何で?」
「栄口、今度水谷ん家に泊まりに行くんだって。変な気ぃ使わせて、やっぱりやめた、なんてなったら悪いだろ」
「そんなこと……」
「三橋もさ。あいつは優し過ぎるから、たぶんこの話聞いたら泣いちまう。俺のことで、泣かせたくないし……」
…さっきから聞いてれば。
何でこいつは、他人の気持ちばっか優先してんだよ…!
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