「自分、ええパンチ、持っとるなぁ…」
「まぁな」
「これは、ヒドイんちゃうん…? めっちゃ足にキテんねんけど…」
「ばーか。自業自得だ」
おなか押さえてピクピクしてる。
フン、いい気味だ。
倒れてる織田に近づき、しゃがみこんで笑う。
…こんぐらいがちょうどいいんだよな、俺たちは。
「なぁ、織田」
「な、なんや…? あ、ヤバイ、立てへん…」
「立たなくていいって…、……」
寝てる織田のほっぺたに、ちょっとだけキスをしてみる。
触れるか触れないかぐらいのキスだったけど、織田の体がビクッと反応した。
「え…?」
「好きだぜ、織田」
「か、かの…!」
「じゃーな」
「え、ちょ、待ってぇや!」
「待たない」
用事は済んだとばかりに、俺はさっさとその場を立ち去る。
きっと、生まれたての小鹿みたいにフラフラしながら、俺を追いかけてくるんだろう。
その姿を想像して、またクスっと笑った。
まだ日にちはある。
初めてのデートは、どこに連れてってもらおうかな。
いろいろと場所を思い浮かべ、
後ろから聞こえてくる頼りない足音に、
気づかないフリをした。
**END**
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