言おうか迷ったけど、エロ本のことや、放って置かれてると勘違いしたことを話す。
それに、織田はずっとクスクス笑って聞いていた。

「それに、女子に告白されてたの見ても、何も感じてないみたいだったし…」
「何言うてんねん。めっちゃ感じてたわ」

「は? あれで?」
「ちゃうって。叶がOKするはずない、ってその女子に優越感持ってたんや」

「………」
「それやのに、まさかOKするって言うとは思わへんやろ」

「う……」
「めっちゃ焦ったわ。パニックやったで」

「ご、ごめん…」
「ええねん、もう…、な?」

また、さらりと頭を撫でられた。
どこまで優しいんだ、こいつは。優しさにまで、涙が出そうだ。

「それに、俺かてゴメンな。叶のこと、襲おうとして…」
「い、いいって、もう、それは…」

「体だけでもええなんて、そないなことちっとも思ってへん。あん時はちょっと、錯乱してたっていうか…」
「だから、いいって! アレは、俺がやらせたようなもんだし…」

「…叶は優しい子やなぁ」
「…どっちが。織田には負けるって」

「ふふ、そうかぁ?」
「そう!」

静かに笑いあう。
こんなに穏やかな気持ちになるのは、きっと…織田しかいない。

「あ! 退部届け、撤回しろよな」
「ん? あぁ、そやったな。監督に怒られるかもしれへんなぁ…」

「怒んねーよ。さっき俺んとこ来て『説得してくれ』って言ってたし」
「あ、そうなん? …って、叶」

「何?」
「まさか、監督に言われたから…ちゃうやろな?」

「な! バカか、お前は!」
「いてっ!」

ぽかっと頭を叩く。
他人に言われたからって、こんなハズイことするか!

「バカって言うなや〜。アホって言うて〜v」
「違いが分かんねーよ、ばーか」

「イケズやなぁ、ホンマに… そないな事ばっか言う奴には…」
「え? …うわっ!」

またぽすんと胸におさまり、織田の顔が近付く。
えっ、この至近距離は…?

「キスしてまうで…?」

ニヤリと笑われて、体に甘い痺れが走った。
さっさとすればいいのいに、一応俺の意見を聞こうとする織田は…もしかしたら最高にヘタレなのかもしれない。


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