「叶。俺、野球部やめるわ」
「……は?」
「フラれた奴と仲良く部活できるほど、俺は強くないねん」
「……」
そう言いながら、倉庫の扉を開ける。
何で、何でそうなるんだ?
「ちょ、ちょっと待てよ!」
「離せや、」
シャツを着る余裕もなく、行かせまいと織田の腕を掴む。
スポーツ推薦で入学してきたのに、それを辞めるって事は…!
「野球までやめることないだろ!」
「もうええねんって」
「織田!」
「叶を見てんのが… もう、ツライねん」
掴んでいた腕を乱暴に振り解かれ、織田はいなくなった。
ぽつんと残された俺は、体が自由になった代わりに…圧倒的な孤独感に襲われる。
「織田……」
どうして。
どうしてこうなったんだ?
俺たちの何がいけなかったんだ?
俺はただ。
織田が好きなだけだったのに。
織田に、俺だけを見ていてほしかっただけなのに。
「おだっ……!」
俺の悲痛な涙声は、誰の耳にも届かずに…空気に溶けていった。
* * *
[*prev] [next#]
5/6
【目次・SR・TOP】