「なぁ、今の誰なん?」
「…知らねーよ」

「ふーん」
「可愛かったな、あの子」

「…え?」
「俺、付き合おうかな」

「は? な、何言うて…」
「コーラ、いらないから。そんじゃ」

「ちょ、ちょお待てや!」
「いっ…!」

さっさと去ろうとした俺の左腕を、痛いくらいに掴まれる。
離せと言おうと織田の顔を見たら、いつになく焦ったような表情をしていた。

「自分、何言うてんの? 冗談じゃ済まされへんで」
「冗談じゃない、って言ったら?」

「え…?」
「織田、俺やっぱ女子のがいいや。織田もそうだろ?」

「…は?」
「やめにしようぜ。まぁ、何も始まってなかったけどな」

「……おい」
「男同士なんて、不毛だろ。すぐ飽きるって。織田だって、面白半分で俺のこと…」

「ええ加減にせぇ!!」
「!!」

織田の突然の大声に、大袈裟なくらいビクっとしてしまった。
刺すような視線が…痛い。

「ふざけんのも、大概にせぇよ…」
「ふ、ふざけてなんか…!」

怖い。
こんな織田は、知らない。
体が…動かない。

「叶の口の悪さは、知ってるつもりやったけど」
「……」

「俺はそんなこと言われて許してやるほど、優しい男やないで」
「…な、何を…」

掴まれていた腕をぐいっと引っ張られる。
そして、至近距離で睨まれた。

「それを、今から教えたるわ…」

低い怒りの声は、俺の体を恐怖で支配するに十分だった。



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