「なぁ、今の誰なん?」
「…知らねーよ」
「ふーん」
「可愛かったな、あの子」
「…え?」
「俺、付き合おうかな」
「は? な、何言うて…」
「コーラ、いらないから。そんじゃ」
「ちょ、ちょお待てや!」
「いっ…!」
さっさと去ろうとした俺の左腕を、痛いくらいに掴まれる。
離せと言おうと織田の顔を見たら、いつになく焦ったような表情をしていた。
「自分、何言うてんの? 冗談じゃ済まされへんで」
「冗談じゃない、って言ったら?」
「え…?」
「織田、俺やっぱ女子のがいいや。織田もそうだろ?」
「…は?」
「やめにしようぜ。まぁ、何も始まってなかったけどな」
「……おい」
「男同士なんて、不毛だろ。すぐ飽きるって。織田だって、面白半分で俺のこと…」
「ええ加減にせぇ!!」
「!!」
織田の突然の大声に、大袈裟なくらいビクっとしてしまった。
刺すような視線が…痛い。
「ふざけんのも、大概にせぇよ…」
「ふ、ふざけてなんか…!」
怖い。
こんな織田は、知らない。
体が…動かない。
「叶の口の悪さは、知ってるつもりやったけど」
「……」
「俺はそんなこと言われて許してやるほど、優しい男やないで」
「…な、何を…」
掴まれていた腕をぐいっと引っ張られる。
そして、至近距離で睨まれた。
「それを、今から教えたるわ…」
低い怒りの声は、俺の体を恐怖で支配するに十分だった。
・ ・ ・
[*prev] [next#]
2/6
【目次・SR・TOP】