「は? 泊まりに行くのがどうした?」
「バッカだな花井! 泊まりっつったら、もうあれしかないじゃん〜!」

「初めてエロい事するんだとよ」
「うわ! 阿部! ちょ、シィーー!!」

慌てて阿部の口元を塞ぐも、阿部がガブッと水谷の手に噛み付いたようで「ぎゃー!」と騒いでいた。
いつも賑やかだな、こいつは。

「花井、ヘタレフトにも先越されんぞ」
「阿部君、誰のことかな?」

「テメーだクソレフト!」
「うわあヒドイ! まだ根に持ってるよ!」

「たりめーだアホ!」
「アホって言う方がアホです〜!」

ぎゃーぎゃー騒ぐ二人を見ながら、どこか他人事のように思えてしまう。
先越されるどころか…もう、少しだって進むことすらないわけだし。

「あっそー、良かったな」
「あれ? それだけ?」

「何が?」
「……花井、お前」

阿部が何か言いかけたところで「座れー始めるぞー」と先生が入ってきた。煮え切らない態度で阿部も離れる。
少し気になったが、まぁいいやと窓の外を見た。

田島からのアプローチがなければ、こんなにもすれ違う生活になるのか、と。
今更気づいた自分に、苦笑した。






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