たまには。
本当に、たまには。
クソレも役に立つな。
●●Twin star●●●
夏休み前の、試験週間。
期末は終わったのに、これでもかと小テスト、小テストの繰り返し。
別に試験が嫌いだってワケじゃねーけど、こう毎日続いてくとウンザリだな。
それでもまだ耐えられるのは、近づく夏休みのおかげだろう。
俺だけじゃなく、この教室…いや、学校全体が浮き足立ってるのが分かる。
野球三昧なのは当たり前。
でも、それでも授業がないってのは大きいだろ?
問題を解きながら、ふと三橋のことを考える。
夏休み中は、どれくらいの時間を過ごせるんだろう。
野球抜きで考えても、きっと今までよりはずっと一緒にいられるはずだ。
考えてる途中、うっかり一人でニヤニヤしてしまいそうになり、慌てて顔を引き締める。
全部を解き終え、一応2回見直しをしたところで、チャイムが鳴り響いた。
・ ・ ・ ・ ・ ・
「阿部〜、どうだった〜?」
「まぁまぁだな。8割は自信ある」
「俺は7割だな。悪くはねーと思うけど」
クソレと花井に話しかけられ、さっきのテストの話になる。
さっきのは数学だったからまだいいけど、次は苦手な古文。
はぁ、とため息をつけば、二人も同じようにしていた。
「あ! そうだ!」
「何だよ、大声出すな」
今までの憂鬱な雰囲気を吹き飛ばすように、クソレが声を上げながら鞄をゴソゴソしてる。
そして、ぺらんと何かの紙を一枚出した。
「あのさー、今度の土曜限定のチケットがあるんだけど〜」
「限定チケット?」
「何のだ?」
ヒラヒラする紙をよく見れば、それは今度新しくできた動物園の無料チケットで。
そういや、最近よくCMしてるな。
「これね、4人までならタダなんだ〜。俺とー、栄口も行くんだけど〜」
「俺と花井で行こうって?」
クソレたちのイチャイチャを、何で花井と一緒に見なきゃなんねーんだ。
思わず仏頂面になれば、花井が「あー、その日無理だわ」と呟いた。
「そうなの〜?」
「ああ、もう田島と約束させられてて」
「それもそうだよね〜、何たって1日オフだもんね!」
「ああ、久しぶりだしな」
俺も三橋とどこか行こうかとは思ってたけど…動物園か。
そういえば、目玉でホワイトタイガーだかがいるとか何とかって…。
こないだの帰り道、三橋が「見てみたいなぁ」って言ってたな。
「ってか、日曜オープンじゃなかったか、それ」
「そうなの! でもね、限定で100人が前日に入れるんだよ〜! 凄くない!?」
「何でそんなチケットをお前が持ってんだよ」
「へへ〜、いろんなツテがあんのv」
ニヤニヤするクソレを一瞥しながら、また三橋を思い返す。
こいつと一緒ってのは若干テンション下がるけど、たぶん栄口しか眼に入ってないからいないと一緒だろう、うん。
「じゃあ、俺と三橋も行く。それでいいか?」
「あ〜、いいよー! 多いほうが楽しいもんねーv」
こいつは俺に毎回ド突かれてるくせに、構わずににこにこしながらチケットをしまってる。打たれ強いっつーか、無邪気っつーか…。
変に毒気を抜かれながら、またチャイムが鳴り響き、小テストの為に集中することになった。
* * *
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