どんな状況だって。

君と一緒なら、楽しめるんだ。



●●Rain drop●●●


「あー、マジでうぜぇー」
「まぁまぁ」

「何とかしろよー」
「無理だって」

ベッドで転がりながら、口を尖らせて文句ばかり言う泉の機嫌は、かなり悪い。
それもこれも、連日雨が続くせいだ。

梅雨明けまでもう少しかかるとテレビで言っていたし、俺がどうこうできる問題じゃない。

部活はできないわ湿気は鬱陶しいわで、口に出るのは悪態ばかり。
どうにかしてやりたいけど、こればっかりはなぁ…。

「なー、クーラー付けてくれよ」
「だめー」

「一瞬だけ! 除湿でもいいから!」
「だーめ。扇風機で十分です」

昼飯の後片付けをしながら、ぶーぶー言う泉に相槌をする。
俺も付けてやりたいのは山々なんだけど、エアコン代はバカにならない。

徹底的に切り詰めてるわけじゃないけど、我慢できる範囲は我慢しないと。

許可を出さない俺に「けちー…」と呟いたきり、何も言わなくなった。
泉も、俺の経済事情に遠慮してるのは知っているし、たぶん気を遣ってくれたんだろう。

食器を戸棚にしまい、ソファに座る。
適当にテレビをつければ、ちょうど天気予報だった。
傘のマークが続く画面を見て、当分泉の機嫌は上がらないかもな、と苦笑する。

ベッドでごろごろしてた泉が、恨めしそうにこっちを見てるんだけど…まだねだってた?

「そんな目で見ても付けませんよー。ほら、固定してやるって」

首振り機能だったのを泉の方へ固定させてやる。
おかげでこっちに風はなくなったが、視線に耐えるよりはマシだ。

「……ぇよ」
「え?」

小さくて聞き取れなかった。聞き返しても「何でもねぇ」とまたプイっとそっぽ向かれてしまった。

んー、機嫌良くさせたいけど…電気代がバカになんねーし…。
どーしよーかな、と考えてると、外がピカっと光った。

「お、雷か?」

俺が言ったと同時ぐらいに、音もゴロゴロと鳴り出した。
さっきまでの普通の降水量より遥かに多い、バケツの水をひっくり返したみたいに、一気にザアザアと雨が降り出す。

「すげー音だなー」
「…そうだな」

そしてまた閃光が走り、音も近くなる。
雷の光り具合を見ようと窓に近寄ると、黒い雲から白い光が連続で洩れた。


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