・ ・ ・


「…っ、浜田ぁあああ!

やっぱり、ココにいた。
1年の俺の声が、2年の教室に響き渡り、クラス全員が何事だと言わんばかりにコッチを向いた。

同じく驚いてる浜田の元へ、ずけずけと近づいていく。
それに浜田が逃げようとしてたけど、一緒にいた梅原先輩と梶山先輩が捕獲してくれた。

「よう、泉くん。度胸あんなー、上級生クラスに怒鳴り込みなんて」

ニヤニヤと梶山先輩にからかわれ、梅原先輩は隣でにこにこしてる。
二人に掴まれてる浜田は、相変わらずムスッとしたまま目線を合わせてこない。

教室中の注目を浴び続けるのは避けたかったから、二人に「お預かりします」とだけ挨拶して、嫌がる浜田の腕を引っ張って教室を後にする。
どこで話をつけようかと迷ったけど、さっきの視聴覚室でいいかとまた戻ると、阿部はすでにいなかった。

浜田に逃げられないようにと、俺がドアに背を向ける形で向かい合う。
久しぶりに真正面で見る浜田の表情は、怒ってるというより…傷ついてるように見えた。

「…よくも、無視してくれたな。おかげでコッチは、阿部に罵詈雑言浴びせられたんだぞ」
「は? …意味分かんないし」

「浜田、俺の目ぇ見ろ」
「……やだ」

「いいから、見ろって」
「やだ」

…ったく、コイツも俺に負けず劣らず頑固な奴だ。
さっき阿部に言われた「無理やり目ぇ合わせて来い」って言葉が頭に浮かび、浜田の両頬をガッシリ掴んで視線をぶつける。

すると、渋々ながらも ようやくこっちを見てくれた。
…よし、言うぞ。ちゃんと仲直り、するんだ。

「…ごめん。俺が悪かった」
「……」

「…浜田の質問に、俺はちゃんと答えてなかった。浜田の聞きたかった言葉に気付いてたのに、言わなかった。俺が引き止めなくても、きっと浜田は俺を選ぶんだろうって…自惚れてたんだ」

自分の不甲斐なさを改めて感じ、だんだんと声が小さくなってしまう。
浜田は何も言わず、ただじっと目を逸らさず見つめてるだけ。

「…問題すり替えて、深く考えないようにしてたのもあるんだ。どっか、怖かったんだと思う。浜田がいなくなったら、なんて…1番考えたくない事だったし」

心臓の音が早い。緊張してるのか、それとも怖いからなのか。
少し声も震えてしまってるけど、…ちゃんと、伝えなきゃ。

「…どこにも行くな。ずっと一緒にいるって、約束した! どっか行くなら、俺も一緒に行く…!」

「いず…み…」

…ヤベェ、何でこんな時に涙が出そうになるんだ。
ギリギリ流れないように耐えてると、ビックリしてる浜田の顔が、潤んだ視界の向こうで笑顔になったのが分かった。


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