「浜田は'物'じゃねーんだ。いつまでも傍に'置いておける'と思ったら、大間違いだ。傍に'いてほしい'なら、テメーがそう伝えねーとダメだろうが。心で思ってても聞こえねーんだ、ちゃんと言葉で伝えやがれ!」

…阿部の叱責に、何も言い返せない。
胸が槍でグサグサと貫かれてるみたいだ。

気付かされた事実に、ショックで空っぽになってる頭の中で、阿部の怒号が響いてこだまする。
それは波紋のようにどんどん広がっていって、体中が凍りついたように動かない。

「大体なぁ、数日浜田に無視されて取り乱してるお前が、遠距離なんて無理に決まってんだろ! いくら馬鹿でも、九州の位置ぐらい知ってんだろ!?」

「し、知ってるに決まって…!」

「だったら、埼玉と九州、どう考えても『会いたくなったから会える』距離じゃねー事ぐらい分かるだろ! 浜田が真剣に戸惑ってるのに、お前は上っ面の事しか考えてねーじゃねーか! だから浜田が離れて行ったんだろ!」

「……っ!」

とっくに致命傷なのに、容赦なくトドメを刺してくる。
全部が全部正論過ぎる上に、気付かされた自分の傲慢さに自己嫌悪して言葉が出てこない。

俺は、無意識に浜田を'都合のいい物'だとでも思ってたんだろうか…?


…違う、そんなんじゃない!

俺はちゃんと、浜田の事…!


「…いいか? 今のテメーがする事は、見当違いにムカつく事でも、俺と言い争う事でもねぇ。浜田ん所に行く事だ」

「……い、行っても、無視される…」

「それでも行け。無理やり目ぇ合わせて来い。喧嘩した後、仲直りする方法ぐらい知ってんだろ。知らないなら、幼稚園からやり直せ」

さっきまでの怒号はどこへやら…言葉は厳しくても、何だかやけに穏やかだ。
幼稚園児に諭す先生みたいな…はは、自分でも自分がガキだって自覚しちまったじゃねーか。


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