「外まで聞こえてますけど。近所迷惑ッスよ」

白けたような、呆れたような顔で注意するのは、泉くん。
手にはコンビニ袋をぶら下げていて、うっすらとプリンの文字が2つ見えた。

泉! コイツらが俺をイジめるんだよ!」
「はぁ…?」

天の助けとでも言いたいような顔で、浜田が突っ立ったままの泉くんに縋り付く。
そこでようやく、ドキドキが収まって意識が覚醒した。

「あ、泉くん。お邪魔してまーすv」
「はぁ、どうも…?」

「じゃ、そろそろ帰るか、梶くん」
「そうだな、梅くん」

泉くん相手じゃ分が悪い。
そう判断した俺たちは、負け戦になる前に撤退することにした。
広げていたノート類を片付け、さっさと部屋を後にする。

「ちょ! お前ら、結局何しに来たんだよ!」
「ベンキョーだろ、ベンキョー」

後ろで浜田がまだいろいろ言ってるけど、それを適当にあしらって玄関を抜けた。
今の俺には、正直 浜田よりも梶の行動の方が気になるからな。
ドアを閉め、歩き出してすぐに腕を小突く。

「…さっきの、何だよ。キスまでするなんて聞いてねーよ」
「そうだっけ?」

「俺までビックリしたわ。なに、アドリブ?」
「まぁな」

不審がる俺とは反対に、梶はハハハと笑ってる。
何だよ、浜田だけじゃなくて、俺までからかわれたのかよ。
根性悪いな…と思いながら、二人同時に傘を差した。

「あー、分かった。もしかして、梅はキス1回じゃ足りなかったんだろ?」
「は!?」

「だから不満なんだろ。しょうがねーな」
「ちが! ……!」

傘の裏で、隠れるようにもう1度。
しっかり抱きしめられてのキスに、治まってたドキドキがまた加速してきた。

近い距離で聞こえる、早い心臓の音。


このドキドキは、どっちの音だ?





**END**


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