***


「あ、栄口」
「…おー、西広ー」

3時間目と4時間目の間、トイレから出たらたまたま栄口に会った。
たくさんのノートを持ってるから、「半分持つよ」と声をかけてみる。

「いいの?」
「いいよ、重そうだし」

「ありがとー」とお礼を言われながら、上半分を持って1組の教室へと歩いていく。
どこか元気がないのは、やっぱり水谷のことかな?

「水谷と喧嘩したんだって?」
「…え、何で知ってるの?」

何でも何も…水谷から聞かなくたってバレてるのに。
栄口もニブイとこあるんだよねぇ。

「仲直りしたがってたよ。まだ怒ってる?」
「…ううん、怒ってないんだけど」

拗ねたみたいに口を尖らせてる栄口が、ちょっと子供っぽい。
普段はみんなのいいまとめ役になってるのに、やっぱり水谷のことになると違うのかな。

「何か、許し方が分からなくなっちゃって…」
「許し方?」

「許したいんだけど、どうしたらいいのか…」
「ふーん」

許し方なんて、栄口ならどうとでも出来そうだけど…意地張っちゃってるっぽいな。
これが水谷の言う『ちょっと頑固』なとこなのかな?
 


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