「自慢やないけど、大抵のことは一発でできんねん」
「自慢だろ、それ」
「ちゃうって。でな、そのせいかも分からんけど…何かに熱くなったことないねん」
「…ふーん?」
「でもな、さっき叶に怒鳴られた時…何かが変わったような気がすんねん」
「何かって?」
「分からん。分からんけど……」
「…織田?」
俯いて黙り込んだから、てっきり泣いてんのかと思った。
顔を覗き込めば、その反対で晴れ晴れとした笑顔をしていて、今まで見たことない表情に少しだけドキっとした。
「おおきに、叶」
「え…。え、何が?」
俺の問いには答えずに、コンテナを降りてさっさといなくなった。
取り残された俺は、ワケも分からずにそのまま座ってたけど。
その時の俺は、織田に対する何かが変わっていたのを感じていた。
ハッキリとその正体は分からない。
ただ、胸の奥に風が通り抜けたような、心地よさを感じたんだ。
お互い共通点なんて野球やってること以外ないぐらいの、ちぐはぐな俺たちだけど…もしかしたら、分かり合えるのかもしれないって。
まさか、ここまで親密なカンケイになるとは、思ってなかったけどな。
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