西浦との試合の後。
三橋の隣には阿部がいて、周りには西浦の奴らが笑顔で囲っていて…。
あいつは中学の時よりずっと、いい顔つきになっていた。
俺ができなかったことを、西浦の奴らはできていた。
それが何だか悔しくて寂しくて情けなくて、試合後にさっさと輪から抜け出し、コンテナの上に座って空を見上げていたんだ。
試合にも勝負にも負けて、ただ流れる雲を眺めて。
しばらくぼーっとしてると、コンコンと音が聞こえた。
下を見れば、織田の頭が見えた。
今は誰とも喋りたくないのに。織田なら尚更だった。
だってそうだろ?
最初から真剣にやってれば、もしかしたら…。
っても、それは畠や柊たちもなんだけどさ。
「邪魔するでー」
「……ああ」
俺が返事するよりも早く登ってきて、隣に座られる。
そして、ポカリを渡された。
「……叶」
「…ん?」
くいっと飲みながら返事すれば、織田が眉間に皺を寄せていた。
いつも涼しげな顔をしてるのに、珍しいな。
「ごめんな…」
「…え?」
まさか謝られるとは思ってなかった。
ビックリして見れば、悔しそうに笑っていて。
「…野球はおもろいなぁ」
「へ?」
「全然予想通りにいかへんわ」
「……」
織田も自分の分のポカリを飲みながら空を見上げる。
こんな時、どう言ったらいいのか分からなくて、沈黙してしまう。
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