「ねぇ、巣山…」
「なに?」
「水谷が足りない気がする…」
「…は?」
「ちょっと行ってくる!」
「はいはい、行ってらっしゃい」
●●真昼のEscape●●●
4時間目が始まる、少し前。
あと1時間我慢すれば、水谷とお昼が食べられる時間だっていうのに、それすら待っていられない。
ただでさえ業間の休みなんて10分しかないのに、1組と7組で教室が離れてるから、会って話すなんてほんの少しだけ。
もしかしたら、トイレとかに行ってて教室にいないかもしれない…そうは思っても、足はどんどん7組に向かって進んでいく。
会えますようにと願いを込めて教室を覗きこめば、窓際で花井と阿部の3人で喋ってる姿が見えた。
良かった、すれ違わなくて…!
「…水谷!」
少し大きい声で呼べば、すぐに気が付いて笑ってくれた。
俺が手招きする前に あっという間に駆け寄ってきてくれたのがくすぐったい。
可愛いなぁ、もう。
「どしたの? 忘れ物〜?」
「ううん、ちょっといい?」
「え? わわ、どこ行くの!?」
「いいから!」
グイグイと腕を引っ張ってダッシュする。
のんびり歩いてる時間だって、今の俺には勿体ないんだから!
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