そんな俺の葛藤なんぞ知る由もない田島は、裏切り者を処分するかどうかのシリアスな場面を、手に汗握って鑑賞してる。
…今すぐに田島に触れたい。
抱きしめあってにゃんにゃんしたい。
だが、今のこいつにそんなことしても無下にされるだけだろう。普段自分からくっついてくるクセに、集中してる時に茶々入れると不機嫌になるんだよな。
「うわー…、うわっ!」
「………はぁ」
激しい銃撃戦の音がリビングに響き、田島もいちいち声を上げて驚いてる。
俺もDVDに集中したいのに、話半分で見ていたから今がどんな状況なのかも分からない。
「花井、これ…うわーやっぱり!」
「…ははは」
映画が終わるまで待つしかないのか。
ったく、何でこのタイミングでDVDなんて見てしまったんだ俺は。いや、田島が見たいって言ったのもあるんだけど…触れたいのに触れられないのは、ある意味拷問だ。
DVDの裏を見ると、全部で121分らしい。見始めてから1時間は経ってるから…チッ、あと半分もあるのかよ!
「花井、これ犯人女だな! 絶対!」
「…そうかもな」
田島は充分楽しんでるようだ。俺もこんなの発症しなきゃ楽しめたのに、何だってこの時期に面白いDVD貸してくるんだ水谷は。
せめて全然つまらなかったら、見るの止めようとか言ってにゃんにゃん出来るのに…!
水谷のアホ!!
のん気なアイツの顔を思い浮かべながら罵詈雑言を浴びせつつ…映画が終わるのを待ち続けなければ。
時よ、早く過ぎてくれ…!
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