「綺麗だな…」
「うん…」

三橋が、っていう意味だったんだけど、花火の事だと思ってるんだろうな。

ちらっと周りを見渡せば、全員が顔を上げて花火を見ている。
当たり前っちゃ当たり前なんだけど…何か、こう…すごく今、キスしたい。
今なら、誰にも見られないような気がするし。

「…三橋、」
「……あべ君、」

俺の言いたいことが分かったのか、三橋もきょろっと周りを確認した。
抵抗する素振りもないし、してもいいって事でいいんだよな…?

「ちょっと、一瞬だけ…」
「…ん、……」

ゆっくり目を閉じた三橋と同じ速度で、俺も目を閉じ…柔らかい唇に触れる。
わずか2秒のキスで、俺のこの気持ちはどれぐらい伝えることが出来るんだろう。

「…やっぱり、暑いな」
「うん…えへへ…」

恥ずかしそうに笑い、ぷいっと前を向いてしまった。
何だその照れ隠しは…可愛いじゃねーか!

「本当、よくやるわ…」
「ひゅーひゅー!」

花井がため息をつき、クソレが冷かしてきやがった。
何だよ、見てたのかよこいつら。見せモンじゃねーよ。

「何がー?」
「何でもねーよ」

田島が振り向いて聞いてきたけど、三橋をこれ以上赤くさせられないからな。
適当に受け流して、連続で打ち上げられる花火に視線を移す。

次々と夜空に浮かぶ、大輪の花。

来年も、その次も、
こうして見られるといい。


その時には、
さっき思い浮かんだ気障なセリフも、

伝えてみようかな。





**END**


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