「綺麗だな…」
「うん…」
三橋が、っていう意味だったんだけど、花火の事だと思ってるんだろうな。
ちらっと周りを見渡せば、全員が顔を上げて花火を見ている。
当たり前っちゃ当たり前なんだけど…何か、こう…すごく今、キスしたい。
今なら、誰にも見られないような気がするし。
「…三橋、」
「……あべ君、」
俺の言いたいことが分かったのか、三橋もきょろっと周りを確認した。
抵抗する素振りもないし、してもいいって事でいいんだよな…?
「ちょっと、一瞬だけ…」
「…ん、……」
ゆっくり目を閉じた三橋と同じ速度で、俺も目を閉じ…柔らかい唇に触れる。
わずか2秒のキスで、俺のこの気持ちはどれぐらい伝えることが出来るんだろう。
「…やっぱり、暑いな」
「うん…えへへ…」
恥ずかしそうに笑い、ぷいっと前を向いてしまった。
何だその照れ隠しは…可愛いじゃねーか!
「本当、よくやるわ…」
「ひゅーひゅー!」
花井がため息をつき、クソレが冷かしてきやがった。
何だよ、見てたのかよこいつら。見せモンじゃねーよ。
「何がー?」
「何でもねーよ」
田島が振り向いて聞いてきたけど、三橋をこれ以上赤くさせられないからな。
適当に受け流して、連続で打ち上げられる花火に視線を移す。
次々と夜空に浮かぶ、大輪の花。
来年も、その次も、
こうして見られるといい。
その時には、
さっき思い浮かんだ気障なセリフも、
伝えてみようかな。
**END**
[*prev] [next#]
7/8
【目次・SR・TOP】