* * *
時間にすれば、たぶん5秒くらい。
でも、もっと長く感じたのは、俺だけじゃないみたいだ。
「…な、なげーんだよ、ばか大地…」
「すいません…」
セリフだけ聞けば、怒ってるようにも見えるけど…でも、尖った感じは全然ない。
むしろ、柔らかくなったような…緊張の糸が切れたような、そんな感じ。
今までももちろん、超好きだったんだけど…キスしたせいか、もっともっと好きになったような気がする。
これって錯覚ッスかねぇ?
夢心地でふわふわしてると、俺の腕の中からするりと先輩が抜けていった。
恥ずかしそうにそっぽ向いててるけど…耳が赤いからバレバレで、年上だけど可愛いなぁって思う。
「…ねぇ、先輩?」
「ん…?」
「もっかい、いいですか?」
「ちょ、調子乗んな!」
「イタッ!」
「勉強すんぞ、勉強!」
またパシッと頭を叩かれ、ついでにシャーペンまで投げられた。
床に落ちたそれを拾いつつ、「もう1回だけ!」って頼んでみたけど…絶対にダメらしい。
もうちょっと長くすれば良かった…!
「いいじゃないスかぁ〜!」
「赤点取りたくねーって言ったのお前だろ!」
「えぇー! …でも、先輩のくち、柔らかかったッス…」
「はぁ!?」
「予想以上ッスねぇ〜…枕で練習してましたけど、やっぱ全然違ったッス!」
「な、なななな…!」
さっきの感触を思い出してうっとりしてると、反対に先輩は真っ赤になって怒ってた。
照れ隠しなんですよね、きっと!
だって照れ屋さんッスもん!
目標だったキスも達成出来たわけだけど、毎回先輩を怒らせるわけにもいかないし…。
よし!
次の目標は、
キスで先輩をうっとりさせる!
これで いこうっと!
***END***
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