背中に回していた右手で、先輩の左頬を撫でてみる。
ビクッと肩が震えてたけど、それが警戒心から来るものじゃないんだろうっていうのは、なんとなく分かった。

「…だ、だいち」
「何スか…?」

「ち、近い…」
「近いッスね…」

たぶん、今のお互いの唇同士の距離はわずか3p。
近すぎて先輩の表情が読み取れないぐらいだ。

「あ、あのさ…」
「何スか…?」

うっとりしながら、まるで囁くように返事をすれば、先輩の頬の赤みが増した気がする。
何か、可愛すぎて心臓に悪いんですけど…。

「もしかして…き、キスすんの…?」
「だめッスか…?」

「い、いや…あの…」
「だって、あとちょっとで触れちゃいますよ…?」

吐息さえ感じられるこの距離と、じんわりと甘い空気の中…するなって言う方が無理だと思う。

「好きッス、先輩…」
「……ふ、雰囲気出すな」

「大好きなんスよ…」
「……だい、ち…」

「先輩は…? 俺の事、好き…?」
「……、……す、好きだけ」

ど、って続くだろう言葉まで待てなくて。

すっと触れたいと思っていた唇に、
ついに触れることが出来たのだった。





* * *


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