***


「あ〜、何か目がしぱしぱする〜…」
「画面の見すぎだよ、もう」

16時すぎ、帰りの電車に揺られながら目を擦ると、栄口に窘められた。
プリクラ撮った後は、UFOキャッチャーやレーシングゲームをしてたんだけど…途中からつい本気になっちゃって、ガッツリ画面に近づいてガン見してたんだ。

その甲斐もなく、栄口が勝っちゃったんだけどね…意外と強かったりするんだよね、栄口ってさ。容赦ないトコも可愛いけど!

「次こそ勝つ!」
「はいはい、頑張ってね」

意気込みつつ、ゴトンゴトンと揺れる電車に体を預ける。
夕方だからなのか、結構混んでて座れなくて立ったまま。そんなに疲れてないからいいんだけど、ちょっと息苦しいかも…。

周りとの距離が近すぎて、会話が筒抜けになるのも嫌だし、いつの間にか二人とも無言になってた。
周囲の人たちも俺たちと同じ気持ちなのか、どこからも話し声は聞こえず、ただ電車の揺れる音だけが響いてる。

栄口と離れないように、って意味もあるけど、こんだけ密着してたら手を繋いでてもバレなさそうだなーと思って、左手で栄口の右手を握る。
それに一瞬だけ栄口が顔を上げて驚いてたけど、俺が小さくウインクすると照れたように俯いちゃった。

栄口からも、小さくだけど握り返してくれて、息苦しいはずなのにテンションは上昇。
堂々と手を繋げるって意味では、満員電車ってのも悪いことじゃないかもなー、なんて思ってた。



つい、10分前までは。
 


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