「ただいまー」
「お邪魔しまーす」

今日家に居るのは、姉弟の3人だけ。
姉ちゃんはお風呂沸かしてたみたいだし、弟はちょうど洗濯物を畳んでるところだった。

「あ、お帰りー。いらっしゃい、泉君…だっけ?」
「はい、泉です。お邪魔しますー」

「泉、先風呂入る? 俺夕飯作るけど」
「あ、俺も一緒にやる!」

「いいの?」
「いいの!」

水色のエプロンを付けながら聞けば、断固として手伝うと譲らない。
何なんだろ、この感じ…?

「こんにちはv」
「ん? こんちは、弟か?」

「うん!」
「うわ、そっくりじゃん栄口ー!」

「あはは、まぁね」
「俺も兄貴と似てるんだけどさ」

泉に姉ちゃん用のオレンジのエプロンを渡しながら、弟がかまってほしそうにうろちょろしてきた。
いつもはちょっと遊んでから夕食の支度するんだけど、今日は泉もいるし…おなかすいてるって言ってたしな。

弟を姉ちゃんに預けて、しょうが焼きやら味噌汁やらを作ろうと、泉と一緒に台所に立った。

「じゃあ、俺は味噌汁作るから、泉はこの生姜擦って」
「おー」

生姜を渡しながら、少しぎこちない手つきで手伝ってくれる。

味噌汁用のわかめを切りながらふと泉を見れば、指示通りに真顔でお肉をタレに漬け込んでる。
…やっぱり、ちょっと気になるな。

「ねーぇ、いずみーぃ…」
「んー…? よいしょ。これ使う?」

「んん、洗っていいよ。あのさー」
「なに?」

「急にどうしたの?」
「…なにが?」

何が、って。分かってるくせに。
知らん顔ですりおろし器を洗ってるけど、何も意図がないってワケないじゃん。

「こないだは、西広ん家に泊まったらしいじゃん」
「…あー、聞いたの?」

「うん。その前は沖だっけ?」
「はは、うん。栄口が3人目」

「何企んでるのさー?」
「企んでるってワケじゃねぇよ。もう焼いていい?」

「いいよー。タレちょっと落としてね」
「はいよー」

じゅわっと音をさせながら、お肉を焼いてく。
薄い肉はあっという間に火が通り、すぐに裏返してまた焼いた。


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