…言って、しまった。
搾り出すようにこぼれた言葉でも、至近距離にある沖の耳には、確実に届いただろう。
何も言わない沖を深く抱き込めば、驚いたように体が強張った。
それに俺の冷静な部分がすぐに後悔をし始めたけど…もう、どうにも止まらなかった。
「友達なんかじゃ、いられねーんだよ…」
何を言ってるんだ、俺は。
誰か、俺の心と口を塞いでくれ。
「…巣山?」
少し、声が震えてる。
その声音を聞いて、今までの関係が完全に崩れたのが分かった。
馬鹿だな、俺は。
破滅すると分かっていて、言葉に出してしまうなんて。
「…本当?」
「…え?」
さっきまでの甘えたトーンではなく、いつものトーンに戻ってる。
もしかして、薬の効果が切れたのか…?
「巣山、好きな子がいるって…」
「…ああ、お前のことだよ。だから、名前は言えなかったんだ」
そんな説明してる場合か?
今ならまだ間に合うかもしれない言い訳が先なんじゃねーのか?
「そう、なんだ…ビックリした…」
「ごめん…」
どう言い訳をすればいい?
いや、もう好意があるのはバレてしまったから、それを否定するのは難しいだろう。
ただ言いたいだけだったから、気にするなとでも言えば…まだ救いはあるだろうか?
[*prev] [next#]
4/9
【目次・SR・TOP】