「…ねぇ、巣山？」
俺の葛藤なんざ知る由もない沖は、少し照れたように頬を赤くしてる。
それにまた、俺の心がぐらついた。
「…何？」
「巣山は、俺のこと嫌いなの…？」
少し俯きながら、でも頬は赤いままで問われる。
少しもじもじしながら尋ねる沖は、俺の理性を破壊するのには…充分だった。
「…わっ！？」
頭の中で、何かが切れたような音が聞こえた。
その音が聞こえたと同時に、目の前の沖を強く抱きしめてしまう。
「どうしたの…？」
これ以上、深く抱きしめることは不可能ってぐらい、腕の中に引き寄せた。
いっそ、俺の中に沖の全てを閉じ込めてしまいたい。
「嫌いになれたら…」
「え…？」
「嫌いになれたら、どんなに…」
「……すやま？」
破壊された理性を、
何とか取り戻そうとしたい。
冷静になれよ。
俺は、何を言おうとしてるんだ？
やめろ、言うんじゃない。
今ならまだ、引き返せるのに。
「好きだ、…お前が、好きだ」
[＊prev] [next＃]
3/9
【目次・SR・TOP】