適当に逃げ込んだ場所は、図書室だ。
授業中というのもあり、誰もいないってのは好都合…なんだけど。

「んん〜…v」

すっかり甘えながら、ぐりぐりと頭を押し付けられる。
こいつ、実は俺の理性でも試してるんじゃないだろうか。

図書室の角の隅、俺は本棚に寄りかかって座っていて、沖は俺の胸に頭を摺り寄せ、全身で甘えてきている。
西広は薬の効果が切れたらしいのに、沖はいつになったら切れるんだ?

「お、おい、沖…?」

俺の首に両腕を回し、ますます擦り寄ってくる。
こ、こんな積極的な沖は初めてだ…。

当たり前だ、こんなのは沖の意思じゃない。
薬のせいなんだから。



…そう思うと、ドキドキしていた胸が落ち着いて、ギュッと締め付けられたような気がした。
そうだ、沖は好きで俺に抱きついてるわけじゃない。

おかしな薬を開発した篠岡を呪いつつ、そっと沖の体を離してみる。
すると、即座にまたくっつかれて甘えられた。

(…はぁ、やべぇ)


何だか、
無性に 好きだって言ってしまいたい。



だが、言ってどうする?
沖を困らせるだけだ。

友達でいいじゃないか。

俺の都合で、
この関係を崩したくない。

そんなの、
何度も考えてきたことじゃないか。

なのに、どうして。



どうして、
こんなに心が痛いんだ?


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