「ここに来るの、控えようかなって…」
「…は? …それって、距離置こうってこと?」

俺の言葉が足りなかったのか、浜田の顔が強張った。驚きながら、まるで刺すような低い声音。

「ち、違うって。そうじゃなくて…」

親に言われたことや 俺の葛藤を伝えれば、ようやくホッとした顔をされる。距離なんて…今更、置けるわけねーだろ。
でも、あんまり近過ぎるのも考え物だってことを言いたいわけで…。

「俺は全然迷惑じゃないけど?」
「うーん…」

確か、ここの家賃は浜田の親が契約して払ってるはずだ。それを考えれば、まだ楽なのかもしれないけど…。

「ご飯だって、二人で食べた方がおいしいし。それに、泉がいないとつい手抜きしてインスタント食べちゃうっていうか…」

優しい口調で、諭すように俺の必要性を喋ってくる。それに少し気恥ずかしさを感じながら、ほんのちょっとだけ浜田の肩に擦り寄ってみた。



「…一人は、寂しいよ」


ふいに、ポツリと落ちた言葉。
その音につられて見上げれば、どこか遠くでも見るような視線の先。

手は繋いでるのに、
隣に座ってるのに。

浜田は今、
ここにいないような気がした。


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