織田や叶の気遣いにジーンときながら、またも見当違いの場所へと走り出す浜田に泣けてくる。

せめて言葉が喋れたらいいのに、と声を出してみても、やっぱり「にゃー」としか出なかった。

そうこうしてる内にあっという間に辿り着き、俺もカゴから降りて一緒に走り出す。

でも、当たり前だけどドアの前には俺はいない。それに、浜田が一瞬怯んだのが分かった。

「泉!! いないのかー!?」

合鍵もらってねーんだから、俺が入れるわけねーのに、浜田が鍵を開けて中に入っていく。
俺も一緒に部屋に入り、にゃーにゃー鳴いてみた。
ここにいるんだって思いながら。

でも、こいつは布団をめくってみたり、押入れを開けてみたり、あまつさえ洗濯機の中まで覗いてやがった。
俺がそんなとこにいたことあったか!?

「ハァ、ハァ、ハァ…!」
「にゃー…」

鳴くのも疲れてきた。
ふー、と座ってると、浜田もベッドに背を向けてガクっと座りこんだ。

汗だけじゃなく、うっすらと涙が浮かんでる。
それを見て、胸からズキッて音が聞こえた気がした。

「どこ行ったんだよ…!」

滲んだ涙が、浜田が抱えてる膝に落ちた。
青いっていうか、もう白くなってきてる頬。

凄く心配されてんのは分かるんだけど…どうしよう、こいつを置いて学校に戻るか?

でも、もう間に合わない。
後5分で花井が警察に連絡する時間だ。


「泉……」
「にゃあ…」


ここにいるんだって。
気づいてくれよ…!

俺が切なく鳴くと、浜田が急に俺の事を抱き上げた。

「なぁ、お前!! 泉のこと見てたんだろ!? あいつ、どこ行ったんだよ?! なぁ、頼むから教えてくれよ!!」

怒号を浴びせられ、体がビクっと震えた。
こいつのこんな必死な顔、見たことない。

教えたいのに、言葉が通じない。
何だか、つられて俺も泣きたくなってきた。


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