巣山はモテるしなぁ。
野球部の中でも、一番男らしいっていうか…ああ、泉も男らしいかな。顔は可愛いけど。

「巣山も、沖のこと好きだったりして?」
「まっさか〜。そんなこ…っああー!?」

「うわ、びっくりした〜…。どしたの?」
「ば、バカだ俺…。すっかり忘れてた!」

「な、何を? 宿題?」
「違うよ! あ、あのね西広…!」

巣山は『好きな子がいる』って言ってたじゃないか!
もう、何でこんな肝心なこと忘れちゃってたんだろう…!

「へー、巣山に好きな子が…」
「ああ〜、もう! 気付いた途端に失恋なんて〜…!」

いや、気付く前から失恋か?
何だか急に肩がドシッと重くなった気がする…そんなぁ…。

「何で失恋なの? だってそれ、沖のこと…かもしれないでしょ?」
「へ?」

「だって、名前言わなかったんでしょ?」
「…そ、そうだけど…」

それもそうだけど、だってそんなこと言ったら、西広かもしれないし、篠岡かもしれないし、モモカンかもしれないしシガポかもしれないじゃないか!

「失恋って決め付けることないよ。ちゃんと相手が分かってからでも、遅くないんじゃない?」

そう言ってハハッて笑う西広は、何だか大人っぽい。
何でそんなに落ち着いてるのかなぁ?

「それより、気になってることあるんだけど〜…」

「なに?」

「妖精さんが叶えた願いって、『5分間だけ、時間を止める』ことだったんでしょ?」

「そうだよ? 巣山以外の記憶とかも残らないようにしてくれって…」

「おかしいと思わない?」

「? なにが?」

何かおかしいかな?
分からなくて首を傾げてると、西広が小さくため息をついた。

「だって、屋上にいたんでしょ? しかもたったの5分間。そこで何してたの?」

「…あ、本当だ」

「しかも、5分後に巣山が傍にいたってことは、どこかへ行ったワケじゃないと思うな。どこかへ行くなら、1時間でも2時間でも止めてもらうわけだし」

西広の説明を聞きながら、それもそうだな〜って納得する。
何で昨日、疑問に思わなかったんだろ?


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