「誰もいねーって。ははは」
「……うぅ」

今日の阿部くん、よく笑うなぁ…いつも笑うけど、声出して笑うのは、珍しいな。
すっごく機嫌いいみたい!

「お、見えてきたな」
「うん…。あ、あの」

「ん?」
「あ、ありがと…ございました!」

「なにが?」
「あの、付き合って くれて…」

散歩の意味もあるけど、今までのことも含めて…。もう夢に怯えてないけど、でも言いたかったから。

「俺が付き合いたかっただけだし。気にすんなよ」

そう言って笑う阿部くんは、最高に格好いい。何か、さっきの悪夢よりも、今この時の方が夢みたい…。

ぽーっとしてる間に家に着いて、阿部くんは自転車に鍵を差し込んでる。そして颯爽と跨った後、突っ立ってる俺の頭をそっと撫でてくれた。

「髪、少し濡れてるから。ちゃんと拭いて寝ろよ」

「うん!」

「よしよし。そんじゃ、おやすみ」

「おやすみ、気をつけ て…!」

「ああ。また明日な」
「うんっ、また 明日!」

ぶんぶんと手を振ると、手を少し上げて応えてくれた。そして背中が見えなくなるまで見送ってから、家に戻る。

こっそり歩きながら部屋に戻って、近くにあったタオルで頭を拭いて。


布団に入りながら思い返すのは、
カッコイイ阿部くん。


なるべく強く思い出さなくちゃ。


だって、

直前の情報は、
夢に出てくるんだもんね!



ね、阿部くんv





**END**


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