* * *



(うう…)

シャワーを浴びて、サッパリしたのは体だけ。頭の中はさっきの夢ばっかりぐるぐる回ってる。

冷たく吐き捨てるように言われた、聞きたくない言葉の数々を思い出しては、耳を塞ぎたくなってくる。頭の中から聞こえるから、塞いでも意味ないのに。

(寝た、かな…?)

22時半過ぎだけど、阿部くんは寝ちゃったかな。ちょっとだけでも、声が聞きたい。
ううん、電話じゃなくても、メールの文字だけでも安心するのに…。

(迷惑かな…?)

携帯を持ちながら、着信履歴の画面のまま動けない。あとボタン1つ押せば、阿部くんの声が聞けるのに。

(…いくじなし)

これが田島くんとかなら、すぐに電話とか出来ちゃうんだろうな。こんなにウジウジしてたら、さっきのが正夢になっちゃうよね…。

阿部くんは、いつ電話してもいいって言ってたし、こ、恋人なんだから…何も悪いことじゃない、よね…?

でも、電話してなんて言えばいいんだろ?
怖い夢見ちゃったから…なんて言ったら、阿部くん呆れるかな? 怒られちゃったりして…ため息つかれちゃうかな。

(…もう!)

携帯とにらめっこしてから、もう10分経っちゃった。
この10分で、阿部くんが寝ちゃうかもしれないのに…!

通話ボタンに親指を乗せて、あとは力を入れるだけ。そうだ、深呼吸しよう。3回深呼吸したら、勢いで押してしまえばいいんだ!

「はー…ふぅー…、はー…、わっ!」

2回目の間に、突然携帯が鳴り出してビックリしちゃった。ドッドッてなる心臓を押さえながら画面を見ると、『着信:阿部隆也』って表示されてて、またビックリしちゃ…、あ! は、早く出ないと切れちゃう!

「も、もしもしっ!!」
『うお!』

思いのほか 大きな声が出て、驚かせちゃったよ…もう、俺のバカ!

『ビックリした…どうしたんだよ』
「ご、ごめんなさい…あの、ビックリして…」

正直に謝ると、電話の向こうでクスって笑われた気配がした。笑われちゃったけど、やっぱり阿部くんの声は落ち着くなぁ…。

『今、何してた?』
「へ? い、今…、今は、何も…」

『そっか』
「…あの、何か、用事が…?」

『用事? はは、ねぇよ。ただ電話したくなっただけ』
「…へ?」

『用事なきゃ電話しちゃいけねーのかよ?』
「…そっ、そんなことないです!!」

『うおっ!』
「…わっ、ご、ごめん…!」

ああ、また変におっきい声出ちゃった…。
電話ぐらい、普通にしたいのに…!


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