* * * 


「お前が巣山とか言うから悪いんだぞ」
「何でだよーぅ…」

力尽きた田島が、俺の胸にぽてっと頬を乗せて口を尖らせてる。少しやりすぎたか…と贖罪の意味も込めて、頭を撫でた。

「巣山はダメだ。いい男すぎる」
「?? そっかー?」

「ああ。あいつは危険だ。変なフェロモン出てる」
「ふぇろもん?」

言い換えれば、男の匂いか。
嫌いじゃない、むしろ好意を持ってるが…田島のことに関しては危険極まりない。いつの間にか掻っ攫われそうでこええ。

「でもさー、おれ花井のがいい男だと思うぞー?」
「…そうか?」

「おう!v それに、巣山って好きな人いるらしいぜぇ?」
「好きな人? 誰?」

「んー、相手までは分かんねー!」
「ふーん。誰から聞いたんだ?」

「水谷! でもー、『たぶん』って言ってた!」
「水谷ぃ? へぇ…」

あいつなら、まぁ分からんでもない。
変に気が付くヤツだからな。

「じゃ、安心だな」
「おー! 安心あんし〜んv」

まるで巣穴にでも潜り込むようにして 腕の中にもぞもぞと入ってきて甘えだした田島を見て、また笑う。

こいつ見てると、本当に飽きねーな。

怒ったり泣いたり
笑ったり甘えたりと、忙しいヤツだ。

俺もそれに影響されてるような気がするけど…まぁいいか。



すっかり落ち着いた、お互いの嫉妬の嵐。


嵐の後は、静かに甘く。

お互いの温もりに酔うことにした。






**END**


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