「誰も見てへんて」
「…と、鳥が見てる」

遥か彼方に飛んでる鳥を指しながら言う叶に、ふっと噴出してしまった。
絶対見てへんやろ。ていうか、万が一見られてたって、別にええやんか。

無性にくっつきたくなってしまい、引き寄せるように腰を抱けば、抵抗するどころか自分から擦り寄ってきて。
その行動に、また笑みがこぼれてしまう。

「鳥、見てるで…?」
「鳥は鳥目だから見えない」
「何やそれ」

自分で言うたくせに。
おかしくて笑えば、叶もつられて笑って。またひとつキスをして。

「俺の願い、聞く…?」
「…うん、聞きたい」

至近距離で催促すれば、ぎゅっと引き寄せられて…耳元でそっと囁かれる。

「さっきの、」
「ん?」

「さっきの織田と、同じこと考えてた」
「え…」

ドキッと心臓が飛び跳ねた気がする。
俺の動揺が叶に伝わったようで、おかしそうに笑われてしまった。

「織田、顔赤いぞ」
「……夕焼けのせいや」

「もう暗いんですけどー?」
「えー、そうですかぁー?」

小突きあいながら笑い合うこの時間。確かに、もうすっかり日は暮れていた。
星はひとつじゃなく、幾つも輝いている。

「夕焼けって一瞬だなー」
「せやなぁ。ぼちぼち帰るか?」
「おう」

まだ一緒におりたいけど、帰宅時間もあるしな。土をほろいながら立ち上がり、ぐっと伸びをした。

 


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