* * *


空が、水色から茜色に変わろうとする刻。

叶に連れられてった先は、寮より少し外れたとこにある水飲み場だった。

部活はどこも終わって、みんな寮に帰ったんだろう。周りには誰もいなく、夕方特有の少しひんやりした空気だけが満ちていた。

そこでさっき買ったポカリを叶に渡しながら、近くの芝生の上に並んで座る。
クールダウンしたとはいえ、部活後の体はまだ熱く、冷たいポカリは心地よかった。

「はー、うめー!」
「せやなぁ」

いつもは寮の部屋で二人で過ごしてるけど、たまにはこういう『外でのんびり』みたいなんもええなぁ。

「なー、織田」
「ん?」

「流れ星ってあるだろ」
「? あるなぁ」

意外な話題に、少し驚く。
まだ少し水色の空を見上げながら、話を続けてくる。

「あれってさ、3回願い事唱えれば、叶えてくれるっていうじゃん」
「あー、そうらしいなぁ」

「一瞬じゃん、流れ星なんてさ」
「せやなぁ。ゆっくりな流れ星なんて聞いたことないなぁ」

少し笑いながら返事すると、叶も同じように笑った。

「そんな一瞬の内にさ、3回も唱えるなんて無理じゃねー?」
「無理やなぁ」

「これをさ、三橋のおばさんに言ったことあるんだ」
「早すぎて無理や、ってこと?」

「そう」

叶は懐かしむように視線を天に向ける。
見上げた空は、少し茜色に近づいた気がした。


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