それに、今まで黙っていた浜田が痛いぐらいに手首を掴んできた。野球に支障が出たらどうすんだ、ってぐらい。
「は、離せよっ!」
ほとんど涙声だ。それに自分で気がついてしまって、また恥ずかしくなる。
もう、俺なんてこの場から消えてなくなっちまえばいいのに。
「離せ、っこの、馬鹿力っ…!」
ぶんぶんと振っても、びくともしないその手。いつでも大人な浜田に、力でも叶わないってのを見せ付けられてるみたいだ。
「…ンの野郎! 離せって言ってん」
「離してほしくないくせに」
冷静な声。
それにハッとしたのも束の間、ぐいっと強く引っ張られてしまった。
ぽすんと入った腕の中。
さっき言われた浜田の言葉の意味が分からなくて…ぐるぐる考えてしまう。
「泉、すぐ顔に出るし」
「……?」
「ごめんな。俺、泉がそんな不安がってるって気づかなくて…。舞い上がってたんかな…本当にごめん」
「べ、別に、俺は…!」
「いいよ。分かってる。分かってるから…な?」
そのまま頭を撫でられて、ぎゅってされて、優しい声で囁かれて。
俺は今まで溜まっていたものを全て吐き出すように、浜田に抱きしめられながら――長い間泣いてしまった。
***
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