***


水谷の考えてることが掴めないまま、真意を問えないままに、数日が過ぎた。
野球部は相変わらずの部活三昧で、プライベートの時間なんて寝る前の少しの時間だけ。

ただでさえ姉ちゃんが家事を多めにしてくれてるけど、それに甘えてばっかりだと悪いから…その少しの時間さえなくなってしまう。
別に、不満とかあるわけじゃないんだ。

部活は楽しいし、
家事だってイヤじゃないし。

なのに、
どうしてこんなに空っぽなんだろう。



「…栄口くん?」
「…ん、どうしたの?」


部活前、三橋に遠慮がちに声をかけられた。
まだ上下制服だなんて、遅いって阿部に言われちゃうよ?

「あの…ご、ごめんね?」
「へ? 何が?」

「あ、あのね、み、水谷くんの…」
「三橋、それで部活するつもりか? 早く着替えろって」

思ったとおり、阿部がやってきて三橋に小言を言う。それに三橋があわあわしてる、いつもの光景。
過保護な阿部に苦笑しながら、三橋の言いかけの言葉が気になる。

「ねぇ、水谷がどうしたの?」
「! あ、あの。水谷くんと…」

「俺が何だって〜?」
「あ! …ううん、何でも ないです!」

ちょうど水谷が入ってきて中断され、結局聞けなかった。

水谷に聞かれたくない内容だったってこと?

それとも二人の間に、何か…?


いやいや、そんなことあるわけない。

もし何かあったとしたら、
阿部が気づくはずだもん。


そう自分に言い聞かせながら、
着替えの手を早めた。





***


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