「これ、めっちゃ下心やんなぁ?」
「どういう意味だ?」
「あれ、分からへんの?」
「うん…シタゴコロ?」
「これ閉めたら中で何やっても分からへんやんv」
「言っとくけど何もしねーからな」
「な! 冷たいわ!」
「うっせ。おっ、見てみろって! 外綺麗だぞ!」
楽しい時間ってのはあっという間っていうけど、本当だな。
気が付けばもう夕暮れ。
森も街も赤く染まり、空は蒼みが増して、あと少しで夜が訪れる。
この旅行も、今日で終わりか…。
何だか名残惜しくて、同じように景色に見入ってる織田を見る。
その横顔にも夕暮れの赤が差し込んでいて、いつもの織田じゃないような感じがした。
「綺麗やなー…」
「…そうだなー」
ゆっくり、
ゆっくりと上昇していく。
この時間が、いつまでも終わらなければいいのに。
夕焼けのせいか、少しの寂寥感が胸を占める。
それに気が付いたのか、織田が何も言わずにこっち側のベンチに座ってきた。
移動の時に少しバランスが傾いたけど、座ってしまえば大丈夫みたい。並んだ後は、俺の右手をぎゅって握ってきた。
「なぁ、叶…」
「ん…?」
「初デートも、遊園地やったな…」
「…そ、そうだな」
それも、何だかずっと昔のコトみたいだ。恋愛のジンクス信じて、自分から織田にキスして。
そのおかげなのかな、こうしてまだ並んで座ってるのは。
「もう少しでてっぺんまで行くんちゃう?」
「んー…」
言われて窓から上を覗けば、確かに近づいてる頂上。
あと5分くらいかな。
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