泣き叫ぶ織田をそのままに、俺たちは洋館に足を踏み入れた。
外は晴れていたのに、中に入ると真っ暗。薄い緑色の電気がチカチカと頼りなげに光っているだけ。そこを矢印に向かって進むわけだ。
「…叶、手ぇ繋いだるわ。な?」
「お前、もしかして怖いのか?」
「ちっとも! ちぃとも怖くなんかないで!!」
「なら、普通に行くぞ」
「…すいませんウソつきました繋いで下さい」
「初めから正直に言えよアホ。ほら」
「はい… っうわああああああ!!」
「うおっ! ビックリした…。何だよ、ただの鏡だろ?」
「ちゃうねんて! 今、鏡に、俺らだけじゃなくて包丁持ったメイド服の女がこっち見てたんやって!」
「あのな、ここお化け屋敷だぞ? いるに決まってんじゃねーか」
「ヒィヤアアアア!!!」
「なっ、今度は何だよ!?」
「今、今冷たい空気が首元にぃぃい!」
「…クーラーだろ」
いちいちウルサイ奴だ。
俺は泣き叫び喚き倒す織田の手をぐいぐいと引っ張り、無理やり進んで行った。
火の玉やらミイラ男が出るたび、織田は洋館中に響き渡るような大声を出し、やっと出た頃には織田がお化けのようになっていた。(…)
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