* * *
「ただいまー、っと」
「おー」
10時前、宣言どおりに水無月が帰ってきた。寸前まで織田も居たけど、今は部屋に俺一人。
たぶん、水無月にからかわれないようにと配慮してくれたんだろうな…。
「ふーぅ、疲れたっと」
ドサっとベッドに身を投げる水無月を見ながら、俺はソワソワしてしまう。
換気とか消臭剤とかあらゆる手を使って『痕跡』をなくしたつもりだけど、もしバレてしまったら…と思うと、どうにも落ち着かない。
その俺の態度を見てか、水無月が不思議そうに見てきた。
「どした?」
「え、あ、いや、…俺、疲れたから寝るわ」
「? おー」
ボロが出ない内に、さっさと寝るに限るな。疲れてるのは本当だし…。
そう思った俺は、もぞもぞと布団に潜り込み、壁際にくっついて寝ようとする。
水無月に背を向けたその体勢に、「あ」と声が聞こえた。
「何だよ」
「……それ、って」
水無月が指差すソコは、首の後ろ。
直に見れないそこに、何かあるのか?
…い、嫌な予感がする。
「叶、それ、きすまーく…?」
「え、…え、えええええ!?」
い、いつの間に!?
首の後ろなんて、キスされたっけ…!?
「やっぱり! 織田来たんだろ、ここに!」
「き、きてねーよ!」
「嘘つけ! 俺が行く前にはソコにそんなんなかった!」
「ち、ちげーよ! 蚊だよ、蚊に刺されたんだって!」
「ふーん、随分デカイ蚊だな! 180くらいの蚊か?!」
「な、ななん…!!」
「うわー、やっぱエロイことしてるー! やだ〜、叶君のえっちぃ〜!v」
「うるせぇっ! 織田が勝手にやったことだっ!」
「キャー!v もう、織田君に勝手にエロイことされちゃったの〜!?」
「………!!」
「織田君ってば、ゴ・ウ・イ・ンv」
鬼の首でもとったようにはしゃ水無月。
クネクネと体をくねらせながら言ったその言葉に、俺の血管がついにブチ切れた。
「…水無月、…」
「え? 何?」
「……殺す!!!」
「えっ? ちょ、ちょっと、叶く…? う、うわぁああああ!!」
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