元々持っているものを消費していくのか、
それともただのタイミングなのか。
どっちが本当なんだろうな。
●●微熱な幸運●●●
「ねぇ本やん、上行こーよ」
「おー」
昼休み、山ちゃんに誘われて屋上へと向かう。
天気のいい日は早弁しておいて、休み時間全部で日向ぼっこするんだ。
この習慣がついたのは…いつからだったっけ?
「…はー、眩しー!」
「うわ、風強いな!」
基本、屋上は立ち入り禁止なんだけど、古い扉の開け方を知ってるごく一部の人間は、こうしてこっそり出入りしてる。
普段はもう少し昼寝してる奴とかいるのに、今日は珍しく俺たち二人きりだ。
風が強いからかな。
「どーする? 戻るか?」
「…ううん、いい。風強い方がいいかも」
「何が?」
「俺の人生!」
「あっははは! 山ちゃんカッコイー!」
「あははは!」
髪がバサバサと風で暴れる中ふざけあってると、せめて風下にいるのはやめようと場所を移動する。
少しだけど壁で風が弱まる所まで歩くと、山ちゃんが目の前のフェンスを掴んだ。
「…ねぇ、本やん」
「んー?」
「本やんは、'運'ってどうなってると思う?」
「うん? あの、ラッキーの運?」
「そうそう」
「どうなってるって…どういう意味?」
意図が理解できずに問うと、こっちを見ないままフェンスの向こうをじっと見てる。
その先に何かあるのかと思って見たけど、俺には何も見えなかった。
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