「さっきね、慎吾が100円拾ったんだって。それ見た和己が『慎吾の一生の運使い果たしたな』って」
「ははは! 慎吾の一生の運って、100円の価値しかねーのか!」
しかもあの和己が言うなんて、きっとマジで言ったんだろうな。冗談とかじゃなく。
それ聞いた慎吾が「一生かよ!」ってツッコむのが目に浮かぶな。
「本やんも、運は自分が持ってる物で、ラッキーな事があると消費していくんだと思う? それとも、運なんてないって思う?」
あぁ、なるほど。そういう意味か。
そんな事考えた事ないな…と思いつつ、前を向いたままの山ちゃんの横顔をちらりと見る。
普段の何気ない会話だけど、どうしてこんな表情をしてるんだろう。
緊張してるっていうか、切羽詰ってるっていうか…
「山ちゃんは、どう思うの?」
「俺? 俺は… 運も実力の内、って思ってる派」
「あー、それ言うよなー」
「何かの出来事があったら、それは偶然じゃなくて必然な気がするんだ。100円拾うにしても、…本やんと喋ってる今も」
フェンスを掴んでる両手に、更に力が入ったのが見えた。
少し震えてるような気もするけど…気のせいか?
風でフェンスが揺れてるのが、そう錯覚させてるのかもしれない。
「…でも、本やんと出会えたのは、ラッキーだったのかなって…」
「それは、俺と出会えて嬉しいってこと?」
「そ、そう…そんな感じ」
「ふーん… 何か、改めて言われると照れるな」
はははと笑うと、山ちゃんも少しだけ笑った。
でも、一向にこっちを見てくれない。山ちゃんも照れてんのかな?
…ん? よく見ると、顔が赤いぞ。
風も弱まって来たし、手の震えもそれが原因じゃなさそうだ。
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