* * *
「おじゃましまーす!」
「おー。こっちの準備は出来てるぞーv」
水谷から渡されたメモ通りに買い物を終わらせ、ついでに分量も量って準備して待っていると、元気な声で部屋に入ってきた。
てっきり泉と一緒に来るかと思ったのに、泉が言うには「栄口が駄々こねてた」らしく、到着が遅れたらしい。
サプライズだから、本当の事言えないもんなぁ。
少し慌てて誤魔化す水谷が容易に想像出来て、泉と二人で笑った。
「ごめんね浜田っち! 先にお金払わせて〜」
「それは後でいいから、すぐ始めるぞー」
財布を出そうとする水谷を制して、まずは作り始めようと提案する。
すると、水谷が「そっか、焼く待ち時間もあるしね!」とか言って腕まくりをした。
俺は『泉が早くケーキ食べたがってるから』って意味で言ったんだけど、通じなかったみたいだ。
「分量はOKだから、あとは手順通りにやればいいと思うぞ」
「ありがと〜! えーと、手順1! 小麦粉をふるう!」
「ふるう道具持ってきた?」
「あるある! そうだ、道具出さないと!」
ごそごそと鞄からビニール袋を出して、テーブルに道具を並べる。
そこから粉ふるいを出して「ジャーン!」って笑顔で差し出してきた。
いやいや、俺に渡してどうする!
「テメーがやるんだろーが」
「あ、そっか! よーっし、やるぞー!」
泉が水谷にツッコミを入れ、意気込みバッチリで粉をふるい出した。
それに笑いながら、すでに下焼きをして粗熱をとってあるクルミを、泉と一緒に荒くみじん切りにする。
「お前、失敗したら罰ゲームだからな」
「えっ! 何すんの?」
「ホールでチョコケーキ買ってこい。俺と浜田、栄口に1個ずつな」
「1人に1個!? それ予算オーバーだし!」
「それがヤなら、ちゃんと作れよ」
「うぅ、分かってるって!」
泉なりの叱咤激励に、水谷の背筋がしゃんと伸びた。
こりゃ、期待出来そうだなv
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