「待って水谷! 待ってってば!」
「待てない〜!」

後を追いかけて、玄関で靴を履こうとしてる水谷に後ろから抱き着く。
帰らないでって言ったのに、何でそうなんの!
理由もおかしいし!

「やだやだ! まだ時間あるのに!」
「そうやって! そんな可愛い事ばっか言うと、本当に死んじゃうんだってば!」

「死なないから! どんな死因だよそれ!」
「だって本当なんだもん!」

そう言って振り切ろうとする体を、ぐいっと壁に押し付けて出て行かないようにする。
玄関でこんなケンカしてるなんてアホらしいとは思いながらも…この勢いじゃ本当に帰っちゃうと思って、俺も本気で止めにかかる。

姉ちゃんたちが帰ってくるまで あと1時間はあるのに、勿体ないじゃん!
本当にギリギリまでいてくれると思ってたのに!

「栄口が可愛いのが悪いんだよ! 俺だって、本当はもっと一緒にいたかったのに!」
「意味わかんないから! だったら帰らないでって!」

暴れて帰ろうとする水谷を、思いっきり抱き着いて制止する。
靴下のまま玄関の土間に降りちゃったけど、そんなの気にしてる場合じゃないし!

しばらく抱き着いたまま帰る帰らないでのやり取りをしてると、観念したのか大人しくなった。
演技じゃないだろうな、と恐る恐る表情を伺うと、顔が真っ赤になってて…あれ?
何でそんな顔してんの?

「…もう、たまにヤになるよ」
「え…? ど、どしたの?」

「栄口が好き過ぎて可愛すぎて、どうにかしちゃいそうな自分がヤになる…」
「…えっ?」

「優しくしたいのに、甘やかしたいのに、俺は…」
「…? みずたに…?」

独り言みたいに呟いた後、俺が押さえつけてた体勢から逆転して、痛いぐらいに力強く抱きしめられた。

…何がどうなってんの?


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