無言のまま連れ込んだのは、近くのプール男子更衣室。
花井達にいろいろ思う事はあるけど、それよりも沖がショックを受けてないかが心配だ。
とりあえずココでいいかと入ったはいいものの、その後に続く言葉が見つからない。
「…大丈夫か?」
「…うん」
暗いからよく見えないけど、うっすらと伺える表情は明らかに動揺してた。
そりゃそうだろう、他人のそんなシーンに鉢合わせるなんて…一生あるかないかぐらいだよな、普通。
「…部室ですんなって話だよな」
「…う、うん」
…やべぇ、墓穴掘ったかも。
俺も動揺してんのか、ナニをしてたのか再確認させるような事を言ってしまった。
ただ、最近沖と二人になる機会がなかったから、少しだけイチャつこうかなと思ってただけだったのに。
「…す、巣山?」
「ん…?」
「もしかして、巣山のが先に来てた?」
「…そうだよ。メールとか気付かなかった?」
「あ、ごめん… 今見てもいい?」
「あぁ… もう遅いけどな」
1通のメールと、2回の着信。
それを確認した後、沖がマナーモード解除するの忘れてたと謝ってきた。
やっぱりな、そうだろうとは思ってたけど。
いろんなタイミングがズレちまったな…今夜に誘うんじゃなかったか。
いや、そもそも待ち合わせ場所を学校にしたのがいけなかったな。
…待てよ、花井達が部室にいなけりゃ、こんな事には…
今になってはもう遅いけど、後悔ばかりが襲ってくる。
この微妙に気まずい空気をどうしたらいいかと考えてると、ふいに沖が服の裾をちょいちょいっと引っ張ってきた。
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