* * *
分かりやす過ぎる嘘にツッコミを入れると、梶もハハハと笑ってた。
あー、やっぱコイツの笑い方っていいよな。
どっか無邪気っていうか裏がないっていうか、本当に笑ってるんだなって分かって安心する。
「…あ、そろそろ帰るわー」
「え? あぁ、もうメシの時間か」
「お前コレ読む?」
「いや、持ってっていいよ」
「サンキュー。明日返すから」
「おー。急がなくてもいいけどな」
突然のキスのせいで読み終われなかった漫画を手にし、立ち上がる。
キスさえなければ、丁度読み終われる計算だったんだけどな。
…うん、キスしたんだよな、さっき。
何事もなかった感じになってるけど…若干、キスした感触は残ってるし。
何だかまた意識してしまいそうで、それを悟られる前にと部屋を出た。
靴を履き、いつも通り見送ってくれる梶に、いつも通り「お邪魔しました」と告げて、玄関のドアを開ける。
いつもと違うのは、家を出て10歩ぐらい歩いた所で、全力で走ってる今だな。
俺にもよく分からないけど、無性に走りたくなったというか…
家に着くまで走りぬいて、乱暴に玄関、自室のドアを次々に開け、部屋に鍵をかける。
勢いのままベッドにタイブし、ゼェゼェと荒い息を整えながら、手に持ってる漫画本を抱きしめたりなんかして。
見慣れた天井を見上げながら、深呼吸を繰り返す。
そこで、ようやく気が付いた。
「…好きだって言われたっけ?」
**END**
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