* * *
視線は漫画に落としたままで、さして雰囲気も変わらない。
けど、ページが一向に捲られないってコトは…少なからず驚いてるんだろう。
コイツはクラスメイトで、親友で、ただ漫画を読みに来ただけなのに。
いきなり変なコトしていいか了解を取られるなんて、思ってもなかっただろうから。
「変なコトか…」
梅が、少し訝しげにボソッと呟いた。
俺の言い方が悪かったかな。キスしたいって言えば良かったか。
けど、あんまり直球に言うのもどうかと思ったんだ。
いわゆる、逃げ道を作っておきたかったというか。
思いっきり嫌な顔されたら、どうでもいい話にすり替えようかと。
例えば、『浜田のモノマネをしてもいいか、って意味だ。何考えてたんだよ』みたいな感じで。
でも、恐らくもう意味は通じてる。
賽は投げられた。いや、投げてしまった。
もう、逃げられない。
だんだん気持ちが落ちてきた所で、ふいに梅が漫画を閉じた。
「いいよ」
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