運命の赤い糸。
俺たちの場合、
糸じゃなくて血だったみたいだけどな。
○○Eternal season○○○
(ヤバイな……)
どこから間違えたんだろう。
いつも来ているはずなのに、今日に限って遭難してしまうなんて。
俺、阿部隆也は19歳の大学生。
植物の成分・性質の研究をしている。
今日から夏休みだってこともあって、休み明けのレポート提出に向けて、早速この山を訪れた。
ここは俺の行きつけの自然の宝庫で、都会の喧騒から逃れられると、たまにバイクを走らせてここまで来るんだ。
川のせせらぎや鳥の鳴き声に癒されていたのは、つい1時間前。
今は立派に、迷子だ。
「……参ったな」
携帯はもちろん、圏外。
ちょっと立ち寄る程度だったから、食物もない。
誰にも山に入ることは言ってなかったから、恐らく捜索もされないだろう。
こんなことになるなら、適当に誰かに言っておけば良かった。
大体、万が一の為の方位磁石がまったく意味を為さない。
ぐるぐると回るだけで、位置なんてサッパリ分からないんだ。
近くに特別な鉱物があるのか、磁石を狂わせる何かがあるのか?
夕方になり、霧が少し出てきた。
今夜はここで野宿かもな…夜に歩き回るのは危険すぎる。
もちろん、そんな準備なんてしてないんだけど。
夏といっても、山の夜は冷える。
せめて、と少し空いてる洞穴に身を縮めようとした時、ガサっと音がした。
鹿か、それとも熊か?
後者だったら最悪だな、と思いながら、体に変な緊張感が走る。
木の陰に隠れながら、正体を見極めようとじっと目を凝らすと…見えてきたのは、人影だった。
ふわふわの茶色い頭が見える。
(助かった…!)
そいつは荷物もなく軽装だ。
ってことは、山に来たんじゃない。
元々ここらへんに住んでる奴なんだろう、って。
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