「でもね、一緒に山に行ってくれたりしてたんだよ!」
「そう です! 守って、くれ て…」
辰太郎と廉が、そいつをかばうように傍に寄ってきた。
いやいや、それにしたって無理な話だ。
ここに、これ以上誰かを養う財力なんて、微塵もねーんだよ。
「僕ね、この人格好良いって思ったんだよ!」
「…はぁ?」
文貴がどこかキラキラした目で、金髪の頭を撫でた。
こんなに汚らしい格好してるコイツの、どこがそう見えるんだ?
「だって、こんなに綺麗な色の髪だもん!」
「うん、見たことない!」
文貴と勇人が「ねー!」って言いながら笑ってる。
いやいや、笑い事じゃないっつの。
「おい、お前。悪いけどお前を養えるほど、裕福じゃねーんだ。お前ぐらいなら、町へ出れば働き手はあるだろう。ここから出てってくれ」
冷血とでも人でなしとでも、何とでも言ってくれ。
俺は何も間違ったこと言ってない。
俺の無慈悲な退去勧告に、9人全員不満顔で暴れだした。
この男、いつの間にこいつらと仲良くなってたんだ。面倒くせぇな…。
「いやー、俺もそうしたいんだけど…」
「何だよ?」
気まずそうにエヘヘと笑うこの男が言うには、出て行きたいけど出て行かれない理由があるらしい。
そんなの、出て行きたくない言い訳じゃないのか?
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