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「…で、どうなんだ?」
「いつも通りさ。失敗の連続」
「そうか。進んでるみたいだな」
「失敗続きだって言ってるだろ」
「失敗だって分かっただけ、先に進めるだろ」
「…そうだな」
本山のこういう前向きな所は、正直とても助かってる。
散らかってる部屋を無造作に片付けながら、微かに笑った。
「お前、ちゃんと食ってるか?」
「ん? ああ、食ってるよ」
「顔色が悪いな。迅が心配するぞ」
「そうか?」
血を抜いてるせいで、多少の立ちくらみや眩暈はあるが、大したことじゃない。
そう、迅に比べたら。
「それじゃ、何かあったら連絡しろよ。当分は山ノ井と一緒にいるから」
「ああ、分かった。山ノ井によろしく」
本山も町から離れて、俺の新薬開発に向けて尽力してくれている。
遠くはないが近くもない距離で、俺たちと同じように過ごしているらしい。
本山と俺、迅が3人でいることはしょっちゅうだったけど、流行り病にかかったのは迅だけだった。
だから、本山も何かその病に対して抗体があるのは分かっているが…その後に想いが通じた山ノ井は、どうなのか分からない。
迅が近づいたら、山ノ井にまで感染するかもしれない…そう思うと、一緒に研究しようとは言えなかった。
本山が持ってきてくれた新しい医学書を机に並べ、また片っ端から読み漁ることにした。
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