***

慎吾さんが、誰かと喋ってる声が聞こえた。
夢と現の間を彷徨いながら、耳を澄ませる。

外が明るくなっていて、今が朝だと気が付いた。
きっと、慎吾さんは本山さんと居るんだ。
定期的に、食料や本を運んでくれる、とても親切な人。

俺が吉原にいた時に、慎吾さんから紹介されたんだ。
共に医者を志してるって、……。

台所からガチャガチャと音が聞こえる中、襖が開く。
視線だけを運べば、本山さんが寒そうに身を縮めながら部屋に入ってきた。

「迅、おはよう。調子はどうだ?」
「あ、おはようございます…、っ」

「無理に起き上がるな。そのままでいい」
「すいませ…」

また布団へ逆戻りさせられ、静かに微笑んでくれた。
すぐ後に慎吾さんも入ってきて、お粥を食べさせてくれる。いつもと違い ほんのりと赤くしょっぱいのは、きっと本山さんが梅を持って来てくれたんだろうと思った。

食べた後はすぐに眠くなる。
いつもは慎吾さんも一緒に布団に入るけど、今日は本山さんがいるから違かった。

うとうとしながら、二人が入った奥の部屋から話し声が聞こえてくる。
内容までは分からないけど、恐らく新薬の話だろうと思った。

慎吾さんはほとんど寝ていない。
夜中に何度か目を覚ます時、いつも書をめくる紙の音が聞こえてくる。
昼間は俺と一緒にいてくれるし…いつか慎吾さんの体の方が先に参ってしまうのではないかと不安になる。

慎吾さんの日々濃くなる 目の下の隈を思い浮かべながら、眠りに落ちた。




***


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