「いい加減、救助来てもええやん。なぁ?」
空を見上げながら呟き、また昼寝しようと木陰に入る。
が、今日は何だか寝付けなくて、昼寝から散歩に変更した。
すると、聞こえてきたのは…あの時の歌声。
また、あの少年がいるのかもしれない。
この間は逃げられたが、今度は捕まえてやろう。
ハンターのような気分になりながら、岩陰からこっそり様子覗き見ると…やっぱり、思った通り。
あの時の少年は、幻じゃなかったんやな。
少し遠くの岩陰から俺も海に入り、そっと近づいていく。
ちゃぷちゃぷと音をさせながら距離を縮めていくと、少年の歌が止んだ。
気づかれたのか…と思いきや、次々と海面に魚が浮かんできた。
それを、岩肌に向かって投げつけている。そこは、俺がいつも魚をとっていた場所で。
(あいつが魚くれてたんか…?)
魚を投げている間、俺はそっと背後から近づく。
そして、無理やり羽交い絞めすることに成功した。
「うわっ!?」
「つーかまーえた!」
驚き振り向く少年を逃がすまいと、ジタバタ暴れる彼を力強く抱きしめる。
ずっと海に浸かっていたせいか、肌はひんやりと冷たかった。
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