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目が覚めたのは、16時過ぎ。
さっきまでの青い空は、赤く染まっていて見事な夕焼けだった。
それに見惚れながら、頭についた砂をほろい落とす。
そして、腹がグーッと盛大に鳴った。
そろそろ探しにきてくれてるやろか…。
救助の船が見当たらないか、岩肌に向かって歩く。
すると、近づくほどに聞こえてくるのは、誰かの歌声らしきもの。
最初は海が鳴ってるのかと思っていたけど…それは、明らかに人の声によるものだった。
(誰かがいる!)
そう確信すると、心が勝手に体を急かして早歩きになる。
ゴツゴツした岩陰をそっと見れば、そこには一人の少年がいた。
海に浸かって、空を見ながら歌っている。
予想外の少年の出現に、一瞬戸惑った。
もしかしたら、こいつも遭難したのかもしれない。
でも、ここで一人でいるよりは、話し相手が出来ることは素直に嬉しかった。
「なぁ、自分も遭難したんか?」
「…っ!?」
あくまで優しく問いかけたのに、そいつはひどく驚いていた。
目が合った少年の瞳の色が、海の深い藍と同じ色をしている。
それに一瞬見入った後、そいつはバチャンと音を立てて潜ってしまった。
「ちょ、待ってぇや!!」
俺の制止の声も虚しく、少しの泡と共に消えてしまった。
しばらく待ってみても、上がってくる気配は一向にない。
「何やったんやろ…」
狐に化かされたかのように 呆然としてしまう。
しょうがない、とそこから離れ、密林の中にあった小さな湧き水をがぶ飲みする。
空腹は全然解消しないが、ないよりマシやな。
そして、夜が近づいてくる。
明日は救助がくるだろうか。
満天の星空の下、祈りを捧げながらまた眠りに落ちた。
* * *
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